ニュース

2019-08-21
心理

学びの紹介 2年:続・はじめての心理学実験~学生による体験記~

社会心理学実験研究法(心理学実験)の授業にて、はじめての心理学実験が7月上旬に行われました。
私たちのグループでは、「援助行動」というテーマで実験を行いました。
実際にどんな実験を行ったのかについて、この授業を受講した 社会・臨床心理学専攻2年の秋山がレポートします。

オープンキャンパスでも使用する建物で心理学実験を行いました
図1 ダーリーとラタネが行った実験の図

ダーリーとラタネによる援助行動の実験

その前に、今回の実験の元にした「ダーリーとラタネの実験」について少し紹介します。
誰かが困っているとき、自分以外に他の人もその場にいると「他の人もいるし、自分が助けにいくのはなんか躊躇しちゃうな…」なんてことがあったりしますよね。
ダーリーとラタネは、「”自分以外に他の人(ここでは「傍観者」と呼んでいます)がいる”と認識すると援助がされにくくなる」という仮説を立てて、実際にそうなるのかどうか実験を行いました。

実験内容としては(図1を参照)、
「学生(1人以外全員サクラ)を2人条件・3人条件・6人条件の群にふりわけ、お互いに相手の様子がわからないようインターホンのある個室へ1人ずつ入ってもらい、グループディスカッションを行わせる。その最中、サクラの1人が発作を起こしたときに、学生は援助行動を起こすだろうか。」といったものです(「サクラ」とは、傍観者あるいは犠牲者として実験に参加するよう伝えられている、いわば「仕掛け人」です)。

そしてどんなデータが得られたかというと、2人(傍観者0人)条件では助けた人の割合は85%、3人(傍観者1人)条件で62%、6人(傍観者4人)条件で31%という結果に。
他のデータとも合わせて分析を行ったところ、この3つの条件間の差は誤差ではない、という分析結果が出ました。このことから、”傍観者の存在は援助行動の抑制に影響を及ぼす”ことが、実験によって証明されたのです。

図2 今回私たちが考えた実験場面

援助行動の実験を行うまで~仮説と実験計画~

ダーリーとラタネの実験などを参考にしながら、私たちが行った実験の目的や仮説を考えていきます。今回の実験では、ダーリーとラタネの研究の再現をすることを目的に、「傍観者の存在は援助行動の抑制に影響を及ぼすだろう」という仮説を立てました。

また、仮説を検証するための実験計画も同時に練っていきます。
他のグループも創意工夫をしながらテーマに沿った実験計画を立てますが、私たちのグループでは、図2のように傍観者が0人の条件と傍観者が4人の条件の2つに変えたり、実験場面などを大きく変えたりして実験を行おう、ということに決めました。

今回の実験で使用した材料(質問紙・封筒・ハンカチ・スマホ)
ハンカチを落とす実験の様子

こうして立てた最終的な実験計画は、
傍観者0人条件と傍観者4人条件の2つの群にわけられた実験参加者に、ある教室でアンケートに回答して欲しいと頼み、指定のルートで向かわせる。その道中で、タイミングを見計らってサクラがハンカチをわざと落としたとき、実験参加者はハンカチを拾うだろうか?」といった内容になりました。
この実験が実際にちゃんとうまくいくのかどうか、リハーサルで微調整も行っていきます。

実験の説明の様子

はじめての心理学実験
実験開始です。
タイミングが重要な実験なので、グループ内で連携を図っていくことも大切な要素になってきます。最初はてんやわんやでしたが、回数をこなすにつれてスムーズにできるようになっていきました。

今回の実験で特に気を配ったのは場所の誘導です。実験の場所は大学内なので、人通りが少しでもあるとちゃんとしたデータが取れません。なので、完全に人通りのない通路(3階)に誘導するために、書類の入った封筒の受け取りという名目で2階に中間地点を設けたりしました。
また、援助行動に関する実験だということがばれないよう、最初に実験内容を説明するときには「この実験は記憶に関するものです」と偽って、ハンカチを落とす場面をカモフラージュできるようにしました。

実験の行程1つ1つに意味を持たせ、無駄な行程を少なくしていくことも大切ですね。

表1 実験条件ごとの援助行動の有無(N=30)

実験が終わったら、いよいよ採ったデータを統計的に分析していきます。表1は実際の実験でとったデータをクロス集計表としてまとめたものです。見た感じでは、0人条件ではハンカチを拾った人の方が多そうで、4人条件ではハンカチを拾わなかった人の方が多そうですね。 果たして、「この2つの条件での差は、統計的に誤差じゃないですよ」といえるのでしょうか。SPSSという解析ソフトを使って分析していきます。

図3 解析ソフト(SPSS)による分析結果の一部

図3がその分析した結果の一部です。
右の表の有意確率というところを見ると、0.028という数字がありますね。基本的に、心理学ではこの数字が0.05以下であれば、統計的に意味のある結果だったということができます。
よって今回の実験は、「0人条件ではハンカチを拾った人の方が多く、4人条件ではハンカチを拾わなかった人の方が多かった」といえる結果になりました。今回立てた仮説は支持されたといえます!

  *   *   *   *   *

今回、実験計画をはじめて自分たちで立てたのは、いい経験になったと思います。 ダーリーとラタネによる先行研究や実験計画の整合性をとるのは、まだ慣れていないのもあって難しかったです。結構、「実験が予想とは逆の結果だった」「これは仮説を検証するのに必要な行程じゃなかったかも」という声もちらほらと…。他のグループも苦戦していたようですね。
また、心理学実験の授業ではグループでの自主的な活動がメインでした。なので、チームワークや積極性なども必要になります。グループ内でも情報共有を怠らず、1人1人が自主性をもって行動することは、実験を円滑にすすめていく上で非常に大事だと感じました。
2年の後期には社会心理学調査研究法、4年では卒業論文があるので、今回学んだことを活かしていきたいです。

実験法の醍醐味の1つは、綿密な実験準備だと思います。念入りな実験準備を経て実際にデータをとり、分析で想定した結果が出たとき、その面白さを強く感じました。

以上、学生による、はじめての実験体験記でした。
今月はオープンキャンパスもありますね。この記事も参考になれば幸いです。

◆関連記事◆
学びの紹介 2年:続・はじめての心理学実験

ニュース一覧

PageTop